佐藤妹子の備忘録

鬱病6年無職の生活。

【完結】合コンで中国人留学生を演じきった話

 前回まではこちら。

satoimo.hatenadiary.com

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話しかけてきた男を退けることに成功すると、そろそろお開きの時間となった。A子もR子も完全にクネクネになっていた。

桑田は完全にR子をロックオンしており、「二次会行く~??」というようなことをみんなに聞いていた。私とC子は比較的酒に強く、またR子の身に迫る危険を察知していたため、アイコンタクトで(二次会まで行って、断固R子の持ち帰りを阻止しなければ)と通じ合った。もう私は合コンの空気は存分に味わったので、R子の警護に集中することにした。A子は別に初対面なのでどうでもいいと思った。

 

お会計は、もともと自分たちのバイト先なので安くして頂いているのだが、男性陣が多めに払ってくれて、私は野口2人とお別れしたくらいで済んだ。数合わせで来ている男子達が少しかわいそうになった。桑田は支払いを終えると満足げに財布を小さなバッグにしまった。

 

二次会に行かない組は帰ったため男女比5:4くらいの人数になり、一行はとりあえず歓楽街のメインストリートに出た。私とC子はR子のサイドを警護する形でついていった。

およそどこの歓楽街でも同じだろうが、メインストリートに面している雑居ビル内の店でなおかつ歩道でキャッチがしつこく声をかけてくる店というのは、12000%ろくな店じゃない。そんなことは酒をたしなむ学生なら常識だと思っていたのだが、桑田は適当に声を掛けられたキャッチに案内され、とっとと店を決めてしまった。正直マジかよと思ったが、警護が目的なので我慢することにした。

 

席に着いた。私はまた梅酒ロックを頼んだ。お通しでポテチが出てきて、同じく酒場慣れしているC子と顔を見合わせた。酒も食い物もとても人権のある人間が口に入れるレベルの代物ではなかったが、喋る気もないくせに何も飲まず食わずでいるわけにもいかない。

A子とR子は一次会と同様、それぞれを狙っている男たちとワイワイ喋っていた。

前後の流れはまったく覚えてないのだが、私はfortranと発言した記憶がある。もう中国人とかどうでもよくなっていたが、ジャージのチャックの左側裏に名前シールが貼ってあるので、見られないように上までチャックを閉めたままでいた。

 

これも流れをまったく覚えていないのだが、R子はR子で「やっぱ2ストに乗りたいかな~~」と言っていた。

この当時R子は自動車免許すら持っていなかったのだが、原付を欲しがっていた。詳細な説明は私もしっかり把握していないので省くが、2ストというのはバイクのエンジンの一種だ。現在一般的なエンジンは4ストロークエンジンなのだが、2ストは簡潔に言えば昔のエンジンである。回転数がすごくて燃費が悪く、今は排ガス規制法で新車は出ていない。しかし2ストのほうがブンブブするので、ブイブイ言わせたい卍ヤカラ卍には人気だ。

R子の2スト乗りたい発言は、機械などを専攻している男たちの心をつかんだ。はたから見るとバイクサークルの姫みたいだったかもしれない。彼らは女子が車とかガンダムとかに詳しいと心を開いてしまう単純な生き物なのだ。桑田もますますR子を気に入ったようだった。

 

私とC子は互いにまずい酒を酌み交わし無言でなりゆきを見守っていた。私は、もうすべての男性を許さない過激フェミニストのような心持でR子の守護に燃えていた。

1時頃、質の悪い居酒屋のラストオーダーが来た瞬間、やっと解放されることに安堵した。

雑居ビルを出て、いよいよ解散という流れになり、私とC子は、少し話してR子を家まで送り届けるということにした。

その短い話し合いの刹那、桑田が瞬時にR子に近寄っていた。私たちが振り向くと、桑田とR子は向き合って携帯電話を操作していた。赤外線通信だかQRコードだか知らないが、桑田がR子と連絡先を交換していることは明白であった。完全に隙をつかれた。

焦った私とC子はフラフラのR子を掴んで「ほら!帰るよ!」と引っぺがした。

R子が「怒られちゃった〜☆」と言うと、桑田も「怒られちゃったね〜☆」と言ったので、お前をぶん殴って星を飛ばしてやろうかと思った。

桑田は名残惜しげだったが、この近辺に住んでいるR子の家まで知られてはまずいと思ったので、「我々が送っていくので大丈夫です!」と怒鳴って、ズンズンと連行した。

A子は酔っぱらっていたがどうでもよかったので、「気を付けて~」と心にもない挨拶をして、そのへんで別れた。学生街方面の終バスはとっくに終わっていただろうが、彼女がその日どうやって帰ったかは知らない。

路地裏までやってきて、桑田に尾行されていないか確認した性悪説信者の私はようやく中国人モードを解除し、ジャージのチャックを全開にした。

 

繁華街にほど近い路地裏のアパートにR子を収容して、私とC子は「「・・・飲みなおすか!!」」となった。馴染みの酒場に行って、カウンターで杏露酒を飲み、そこの店主に「今日コンパだったんすけど」「R子が狙われてて」「二軒目のお通しポテチだった」などと愚痴っていたら、午前3時になっていた。

その店も閉まり、私とC子は店主に、さらに違うバーに連れて行ってもらった。大人な感じの真っ暗な店内に、カリフォルニアだかどっかのリアルタイム映像がスクリーンで流れていた。我々はカウンターの高い椅子によじ登って座った。

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店主が「この子達今日コンパで、お通しにポテトチップスでてきたんだって」と笑いながらしゃべると、バーのマスターは「それは災難でしたね、」と言ってその場でポップコーンを爆ぜて、「せめてこれくらいじゃなきゃね」と言った。

私とC子は、こんな高い椅子のある大人なカリフォルニアンバーに来るのは初めてだった。こんな粋なチャージが出てくるのも初めてだった。こんなオシャレな店になんで俺は高校のジャージで座ってるんだろうと思った。

「大人の店ってすごい~~」と我々は感激し、同時に二軒目のゴミさを再確認した。

酒場の店主にオシャレなカクテルをご馳走になりながら、「食を共にするということは・・・」などと語り合い、午前4時頃になった。

 

オシャレなバーも閉まるということで酒場の店主にもお礼を言い、またC子と二人きりになった。C子は学生寮に住んでいて、朝にならないと門が開かないとのことだったので、カラオケで時間をつぶした。

 

夜が明けた。ついにC子とも解散し、私は、ジャージを翻しながら歩いて帰った。

黎明の白い光と、まだ排気にあてられていない澄んだ空気が、百万石の城を包んでいた。

 

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A子はその後、合コンにいたうちの一人と付き合って、数か月で別れていた。

R子と桑田には最近第2子が生まれ、家族4人の写真が印刷された年賀状がうちにも届いた。

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画像はイメージです。

 

・・・・・・桑田さん、あのときは邪魔してすみませんでした!!!!!!!!!!!

ちなみに私の欲しいものリストはこちらです。